11月も終盤に入り、引き続き様々な分野で活躍するスタートアップ企業が資金調達を発表しています。
今週は、様々な業界で、DX関連の調達例が目立ちました。そこでこの記事では、11月25日から11月29日の間にリリースされたスタートアップの資金調達ニュースのうち、DX関連事業のものをまとめています。
さらに、事業内容、調達金額、今後の展望についても詳しく解説します。
債権管理業務のDXを推進するLecto、資金調達を実施。累計調達額は13億円超に
事業内容: Fintech関連事業
調達金額: 非公開(累計調達金額は13億円)
引受先: SMBCベンチャーキャピタル、りそなキャピタル、三菱UFJイノベーション・パートナーズ、みずほキャピタル、ALL STAR SAAS FUND、D4V
今後の展望: 人材採用やマーケティングの強化
Lectoは、債権管理業務を行うオンラインプラットフォーム、「Lecto(レクト)」を提供するプラットフォーマーです。2021年3月のサービス提供開始以降導入が進んでおり、2024年10月末時点で累計債権取扱額は延べ470億円を突破しています。また、今年度の累積導入件数は前年度比で2.8倍超となっており、近年特に大きく利用を伸ばしています。
「Lecto」は、債権管理業務のDXを推進するプラットフォームで、アナログな運用が主流だった「債権管理」「督促・回収」といった業務をデジタルプラットフォーム上で完結することができます。もともとは金融サービスに主に導入されていましたが、支払いが発生する幅広い業種業態・業種のサービスで応用が可能で、公共サービス、不動産賃貸サービス、通信サービスなど利用が拡大しています。
不妊治療業界をDX化するARCH、9億円の資金調達を実施
事業内容: 生殖医療、婦人科チェーンのプロデュースとシステム開発
調達金額: 9億円
引受先: ANRI、XTech Ventures、ブーストキャピタル、第一生命保険、西武しんきんキャピタル
今後の展望: システムのさらなる改良、人材採用・体制の強化
ARCHは、不妊治療を専門とする、「医療」×「デジタル」を掛け合わせた事業を展開するヘルステックのスタートアップです。婦人科や不妊治療施設の開業や運営の支援を行っているほか、患者と医療機関双方に治療用のアプリやシステムを提供するなど、多角的な事業展開を行っています。
ARCHが2022年にプロデュースした「トーチクリニック」は、ARCHによるDX化を含む全面的な支援を行ったクリニックです。ARCH独自の院内システム(電子カルテ・培養管理)及び患者用アプリケーションを導入したことで、医療者のオペレーションの効率化、および患者の負担軽減に成功しており、妊娠率が全国平均で36%にとどまる中、54%の妊娠率を達成しています。ARCHは恵比寿での設立を皮切りにチェーン展開を目指しており、今後も婦人科・不妊治療クリニックの開業/運営支援を拡大する予定です。
ブライダル・バンケットビジネスをDXするTAIAN、6億円の資金調達を実施
事業内容: ブライダル・バンケット関連商品の開発および販売
調達金額: 6億円
引受先: グロービス・キャピタル・パートナーズ、ジェネシア・ベンチャーズ、ANRI、東京海上グループ、三菱UFJキャピタル、静岡キャピタル、キャナルベンチャーズ等
今後の展望: 新規事業開発への投資、既存事業のさらなる拡大、組織組成のための採用活動
TAIANは、ブライダルに関連したデジタルサービスを提供するスタートアップです。オールインワンの多機能婚礼システム「Oiwaii」や、Web招待状とWeb席次表が連動したサービス「Concept Marry」などが主力プロダクトで、ブライダル業界従業者の業務負荷軽減、およびカップル・ゲストの体験価値向上を目的としたSaaSを提供しています。
「Oiwaii」は、新規顧客集客から生涯顧客化まで、結婚式業務に必要なあらゆるデータを一括管理できる婚礼DXプラットフォームで、スケジュール・配席管理、さらには自動受発注や記念日メール配信機能まで、業務効率化と顧客満足度向上を支援します。「Concept Marry」は100以上の式場で利用されているWebサービスで、招待状で取得した情報をそのまま席次表に反映でき、式場ごとの情報設定が可能など利便性と機能性に優れています。
ビール業界をDXするクラフトビールスタートアップBest Beer Japan、2.1億円の資金調達を実施
事業内容: クラフトビール醸造所向け管理ソフト、物流サービス、B2Bクラフトビールプラットフォームの運営
調達金額: 2.1億円
引受先: KURONEKO Innovation Fund2号、ぐるなび、PE&HR、アグリビジネス、他個人投資家
今後の展望: 醸造所がより多くの消費者にアクセスできる環境の構築
Best Beer Japanは、クラフトビール業界に特化したスタートアップで、管理ソフトや物流サービス、プラットフォームの提供により、クラフトビール業界のDX化をリードしています。2023年7月に正式リリースしたクラフトビールプラットフォームは、月間33%の成長率を達成するなど、認知と利用を拡大しています。
Best Beer Japanは生産者と流通業者の双方に対して、デジタルソリューションを提供しています。Best Beer Japanの「樽管理システム」は、スマートフォンで手軽に操作できるシステムで、在庫と出荷をリアルタイムに把握し、酒税計算も簡単に行うことができます。業務店専用クラフトビールECサイトの「Craft Beer Platform」は、日本各地の醸造所の情報が一つのサイトに集まっているプラットフォームで、200社以上の醸造所から、卸価格でビールをまとめて購入できます。この他にも、BtoBの醸造所向けECや樽のシェアリング、レンタルサービスなど、多彩なサービスでクラフトビール業界のDX化を推進しています。
まとめ
11月25日から11月29日の資金調達例をまとめました。
DX化はあらゆる業界で進んでおり、特にこれまではアナログな手法がとられていた領域では、デジタル技術を有する企業から活発な動きがみられます。
「不妊治療」や「クラフトビール」など、ニッチな領域でも大きな資金調達に成功しており、DX化による効率化の経済性がうかがえます。
「Plus Startup」では、今後も資金調達例を紹介してまいります。