11月が始まり、さっそく様々な分野で活躍するスタートアップ企業が資金調達を発表しています。
今週は、特にエコロジー関連事業での資金調達例が目立ちました。そこでこの記事では、11月4日から11月8日の間にリリースされた、エコロジー関連事業でのスタートアップの資金調達ニュースをまとめています。さらに、事業内容、調達金額、今後の展望についても詳しく解説します。
金属基複合素材開発のアドバンスコンポジット、15億円の資金調達を実施
事業内容: 溶湯鍛造による金属基複合材料及び、接合製品の開発、製造並びに販売
調達金額: 15億円
引受先: 環境エネルギー投資、信越化学工業、ダイキン工業、電気興業、電通グループなどから
今後の展望: 製品開発、製品の品質向上、生産設備の拡充、販売の組織体制強化
アドバンスコンポジットは素材のメーカーであり、金属を基材とし、繊維や微細なセラミックス粒子などの補強材を含んだ素材、「金属基複合素材」の製作を専門としています。「溶湯鍛造法」と呼ばれる高圧鋳造法がコア・テクノロジーで、この技術により内部欠陥の少ない素材や特性の優れた複合材料の鋳造が可能です。
提供している素材は、主に金属とセラミックの複合素材と、金属とグラファイトの複合素材です。セラミックとの複合素材は軽量性と剛性・強度を両立しており、駆動部品の軽量化による高速化、省エネルギー化を可能とします。グラファイトとの複合素材は効率的な放熱が可能で、電子デバイスの最適化と長寿命化を支えます。アドバンスコンポジットは、これら持続可能性に優れた素材によって、「地球の未来を素材で支える」ことを目指しています。
レーザー核融合の実用化を目指すEX-Fusion、11億円の資金調達を実施
事業内容: レーザー核融合商用炉の実現
調達金額: 11億円
引受先: みやこキャピタル、デライト・ベンチャーズ、千島土地
今後の展望: 実証実験の実施、技術の内製化の推進
EX-Fusionは、レーザー核融合技術に専門性を持つスタートアップで、「高速点火方式」という方法によるレーザー核融合を目指しています。「高速点火方式」とは、燃料の「圧縮」と「点火」を2段階で行う方法です。ほかのレーザー核融合技術には、古くから研究されている「中心点化方式」がありますが、「高速点火方式」はそれよりもエネルギー効率が高いことが特徴です。「高速点火方式」の詳しい説明については、以下のリンクをご参照ください。
EX-Fusionは、去年7月6日の調達以降、浜松に自社施設を設立し、開発を進めてきたレーザー制御装置やターゲット連続供給装置などのコンポーネントを統合して試験できる環境を整えています。また、エネルギー分野以外への技術転用も目指しており、レーザーへの知見を背景にした光産業分野の技術開発を目指しています。
先進的な加水分解技術を持つ日本ハイドロパウテック、約4億円の資金調達を実施
事業内容: 加水分解製造の独自技術を活用した食品の企画・開発・製造・販売
調達金額: 4億円
引受先: INSPiRE Mutualistic Symbiosis Fund 1
今後の展望: 海外事業の展開
ハイドロパウテックは、「加水分解物製造」における独自の技術と経験を有するスタートアップです。「加水分解物製造」とは、タンパク質やデンプンなどの高分子化合物を水と反応させて、小さな分子に分解する加工方法です。この方法によって、環境負荷を軽減したうえで、化学薬品に頼らない食品添加物の作成が可能になります。
ハイドロパウテックは、2024年4月にはシンガポールに海外子会社(HYDRO POWTECH SINGAPORE PTE. LTD.)を稼働させており、今回の資金調達により、ASEANをはじめとした海外事業を拡大することを目指しています。同社は既存製品の輸出促進や加水分解物製品の現地製造化を通じて、販路を開拓していく方針です。
不要品の回収・選別・再流通のインフラを構築するECOMMIT、15.9億円の資金調達を実施
事業内容: 循環型社会に向けたインフラ・システム開発およびリユース・リサイクル事業
調達金額: 15.9億円
引受先: 中部電力、オリエントコーポレーション、グローバル・インフラ・マネジメント、Kips
今後の展望: 拠点の拡大、他企業との資源循環の仕組みの構築
ECOMMITは、資源循環サービス「PASSTO」を提供する、リユース、リサイクルを専門とするスタートアップです。自社を「循環商社」と称しており、各地から回収した不用品を、全国7箇所にある自社の循環センターで回収・選別・再流通しています。
「PASSTO」はポストにインスピレーションを受けたサービスで、駅施設やレジデンス、ショッピングモールなどに、資源回収用のBOXを設置できるサービスです。「PASSTO」の設置は条件付きで無償であるほか、トレースデータにより拠点ごとのゴミ、CO2の削減量をデータで確認できるなどのメリットがあり、全国3,000を超える拠点に利用が拡大しています。ECOMMITは、こうしたサービスによりものが循環するインフラを構築し、「捨てないをかなえる」ことを目標としています。
まとめ
11月4日から11月8日の資金調達例をまとめました。
今週はエコロジー関連で10億円を超える調達例が相次ぎ、サステナブルなビジネスへの注目が表れています。各企業の技術力も目立っており、アドバンスコンポジット、EX-Fusion、ハイドロパウテックの各社は、独自の技術を有していることが強みです。
一方で、ECOMMITは、エコロジーに「インフラ構築」という概念を持ち込むことで、利便性の高い仕組みの社会実装を目指しています。
「Plus Startup」では、今後も資金調達例を紹介してまいります。
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