スタートアップ資金調達リサーチ【Week : 10/7-10/11】今週は医療関連事業をピックアップ!

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10月も上旬が終わり、引き続き様々な分野で活躍するスタートアップ企業が資金調達を発表しています。

今週は、医療、ヘルスケア業界における資金調達のニュースが目立ちました。そこでこの記事では、9月30日から10月3日の間にリリースされた、医療、ヘルスケア関連事業の資金調達ニュースをまとめています。さらに、事業内容、調達金額、今後の展望についても詳しく解説します。

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新たながん治療の実用化を目指すアルファフュージョン、10.2億円の資金調達を実施

事業内容: アスタチン(At-211)を用いた標的α線核医学治療

調達金額: 10.2億円

引受先: SBIインベストメント、三井金属鉱業、神戸大学キャピタル、常陽キャピタルパートナーズ、大阪大学ベンチャーキャピタル、D3 LLC、日揮株式会社

今後の展望: 研究開発と企業主導臨床試験の準備、国内外での治験薬GMP製造含むサプライチェーン体制の強化、チーム体制の拡充

アルファフュージョンは、大阪大学及び科学技術振興機構(JST)産学共創プラットフォーム共同研究推進プログラムにルーツを持つスタートアップです。アスタチンという放射性物質の取り扱いにノウハウがあり、これをがん治療に転用した標的アルファ線核医学治療(Targeted Alpha Therapy、TAT)の実現を目指しています。

TATとは、射性同位元素が放出するアルファ線という放射線を用いて、がん細胞などの病変部位を直接攻撃する治療法です。アルファ線は高エネルギーかつ作用範囲が限定的なため、治療効果が高く、かつ副作用が少ない治療が期待されています。TATに使われる放射性同位体は不安定であるため扱いが難しいですが、アルファフュージョンはこの一種であるアスタチンを実用化するための研究を進めています。

アルファフュージョンの目標は、創薬としてのアスタチンの応用です。具体的には、患部にアスタチンを届け、局所的なアルファ線放出によりがん細胞を破壊するという方法です。アスタチンは不安定さゆえに短寿命であり、アルファフュージョンはサプライチェーンの整備も含めたTATの社会実装に取り組んでいます。

iPS細胞研究所の研究をルーツに持つリジェネフロ、22.5億円の資金調達を実施

事業内容: 腎疾患治療薬の研究開発・生産・販売

調達金額: 22.5億円

引受先: DCIパートナーズ、JICベンチャー・グロース・インベストメンツ、日本ベンチャーキャピタル、東北大学ベンチャーパートナーズ、Golden Asia Fund Ventures Ltd.、三井化学、グローバル・ブレイン、京都大学イノベーションキャピタル、ジャフコ グループ、三菱UFJキャピタル、QB2パートナーズ有限責任事業組合、旭化成

今後の展望: 臨床試験の推進

リジェネフロは、京都大学iPS細胞研究所の長船健二教授が2019年に創設した創薬のスタートアップです。iPS細胞の技術、ノウハウを直接的、間接的に活かして、膵臓、腎臓、肝臓など重要器官の病変に対する治療薬を開発しています。

現在開発している治療薬のうち実用化が進められているのは、RN-014RN-032の二種類です。RN-014は遺伝性の腎臓病、常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)の治療薬候補です。ADPKDは根本的治療法が確立されておらず、患者数も多い病気であり、よりよい治療法が求められています。リジェネフロはiPS細胞技術を使って、ADPKDの病気の状態を模倣した「腎オルガノイド」というミニチュアの腎臓を作り、より正確な疾患モデルを作成することで治療薬を開発しています。

もう一つのRN-032は、慢性腎臓病に対する治療薬です。こちらもiPS細胞技術が活かされており、腎機能の基本的な機能を担う「ネフロン」の元となる物質を、ヒトiPS細胞から作り出すことで治療薬としています。リジェネフロはこれら治療薬の実用化のほか、iPS細胞技術のさらなる応用を目指しており、肝硬変の細胞療法などを開発中です。

ロボティクス技術を駆使したパワード義足を製造するBionicM、約300万米ドルの資金調達を実施

事業内容: ロボティクスと身体を融合したモビリティディバイスの研究開発・事業化

調達金額: 約300万ドル

引受先: 海外投資家

今後の展望: 技術開発および製品改良への投資

BionicMは、創業者の孫氏が、東京大学博士課程において行った研究成果を基に設立されたスタートアップで、本社を東京大学アントレプレナープラザに置いています。アントレプレナープラザは東京大学と関係の深いスタートアップのための施設となっており、BionicMは東京大学と関係が深い企業と言えます。

BionicMのコア技術は、ロボティクス技術を駆使して装着者の動作をアシストするパワード義足、「Bio Leg」です。「Bio Leg」は片足を喪失した方に向けた製品で、バランスや対称性のとれたスムーズな歩行を実現し、健脚への負担を軽減しています。

すでにテストをふまえた実用化に成功しており、2024年5月には米国の医療保険適用承認の取得を完了しています。2024年8月に米国市場で「Bio Leg」の販売を開始しており、大きな義肢市場であるアメリカでのさらなる展開を目指しています。

番外編 :テクノロジーで人々を適切な医療に案内するUbie、最新の資金調達ラウンドにGoogleが参加

事業内容: 問診エンジンとプラットフォームの提供

今後の展望: 生成AIを含むデジタルイノベーションを活用、日本の医療のDXを目指す

Ubieは、ITと医療の両方の知見を有するプラットフォーマーで、医療のDXを目指しています。一般向けには、症状から病名を検索できるエンジン「ユビー」を提供しており、使いやすさから2024年の5月に月間利用者数1000万人を突破しています。また、医療関係者向けには「ユビーメディカルナビ」というサービスを提供しており、こちらはAI問診(Web問診)による院内の業務効率化と、患者と医療機関のマッチングを可能にしています。

Ubieはグローバル事業にもフォーカスしており、2022年末には米国子会社を設立していました。また、2023年にはGoogle Playが主催する賞で、「優れたAI部門」の賞も獲得していました。

そのような状況のなか、今回の資金調達では、Google社が資金調達ラウンドに加わり、両社はさらに協力関係を深めています。Ubie社の発表では、「両社は生成AIを含むデジタルイノベーションを活用し、日本の医療システムのデジタルトランスフォーメーションを進めることで合意」したということです。医療へのAIの活用に注目が集まっています。

まとめ

10月7日から10月11日の資金調達例をまとめました。

医療分野においては、各大学の研究をルーツとする事業がいくつも見られます。特にアルファフュージョンやリジェネフロは、アルファ線やiPS細胞といった最新技術の実用化を目指し、そのポテンシャルは高いです。

Ubieなど、IT分野からのアプローチもあり、Google社との協業は、サービスの展開において大きな追い風となるはずです。

「Plus Startup」では、今後も資金調達例を紹介してまいります。

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