9月も中盤に入り、引き続き様々な分野で活躍するスタートアップ企業が資金調達を発表しています。
この週は、環境・エコロジー関連事業で、先進的な取り組みをしている企業が資金調達に成功していました。
そこでこの記事では、9月9日から9月13日の間にリリースされた、環境・エコロジー関連事業の資金調達ニュースをまとめています。さらに、事業内容、調達金額、今後の展望についても詳しく解説します。
自然エネルギーの蓄電、送電事業を展開するパワーエックス、24.6億円の資金調達を実施
事業内容: 大型蓄電池の製造・販売、EV チャージステーションのサービス展開、電気運搬船の開発・製造、及び再生可能エネルギー等の電力供給
調達金額: 24.6億円
引受先: 戸田建設、SMBC日興証券、Frontive Holding、Spiral Capital、ちゅうぎんキャピタルパートナーズ
今後の展望: 製品やサービスの出荷および導入を加速
パワーエックスは、蓄電池に関する総合的な開発、設計ノウハウを有するエネルギー系のスタートアップです。特に再生可能エネルギーに関連したサービスをアプリケーションを含め多角的に展開しており、「溜める」「運ぶ」「使う」をデザインすることで、自然エネルギーのさらなる普及を目指しています。
パワーエックスの蓄電池は、さまざまなサイズや用途に対応しています。。コンテナ型の大型蓄電池「Mega Power X」は、大容量かつメンテナンスフリーで、20年の容量保証を実現。それより小型サイズの「PowerX Cube」は低価格で設置しやすく、様々なシーンで活用できます。どちらも専用ソフトウェア『PowerOS』で管理が可能で、遠隔監視および制御ができるほか、24時間365日の保守体制を提供しています。
また、パワーエックスの子会社、海上パワーグリッドは、電気運搬船を始めとした海上での送電技術を保有。豊富な自然エネルギーを発電できる洋上から、陸上にエネルギーを届けるための製品やサービスをリリースしています。
京都大学発、「空気の資源化」を目指すSymbiobe、8億円の資金調達を実施
事業内容: 海洋性紅色光合成細菌を用いたプラットフォームの研究、開発
調達金額: 8億円
引受先: 環境エネルギー投資、出光興産、Shimadzu Future Innovation投資事業、三菱UFJキャピタル、Beyond Next Ventures、京都大学イノベーションキャピタル、京都キャピタルパートナーズ、山口キャピタル
今後の展望: 研究開発の推進、人材の獲得
Symbiobeは、京都大学発のバイオテクノロジースタートアップです。「紅色光合成細菌」という微生物についての研究実績、ノウハウがあり、これを利用した物質生産プラットフォームを発展、普及させることを目指しています。最終的には、環境負荷も少なく、地球にも人にもやさしい材料と全く新しい循環の仕組みを作ることを目指しています。
「紅色光合成細菌」は、海水に生息する微生物であり、通常の光合成に加え、空気中の窒素を直接固定して蓄えることができる、「窒素固定」能力を持っています。この生物特有の能力を使うことで、ほぼ無尽蔵な「空気」という資源から、CO2やN2を固定し様々な有用物質を作り出すことができます。Symbiobeの専門は、この細菌の培養および利用です。
具体的に「紅色光合成細菌」を利用して製作できるプロダクトには、産業用のバイオポリマーや、農業向け窒素肥料、水産養殖用飼料などがあります。各事業者向けにプラントを構築し、「紅色光合成細菌」を供給、その後CO2やN2を固定した細菌を回収することで、各種プロダクトを製造する、というビジネスモデルです。
ゼオライト触媒技術の実用化を目指すiPEACE223、約2.3億円の資金調達を実施
事業内容: バイオエタノールからプロピレン(化学品原料)およびプロパン(燃料)等を製造する触媒プロセスの開発とプラントのプロセス設計
調達金額: 約2.3億円
引受先: 日本化薬、UMI3号投資事業、UMI3号脱炭素投資事業、UMI3号脱炭素東京投資事業
今後の展望: 引受先との共同研究、技術の実用化
iPEACE223は、「ゼオライト触媒技術」という技術を保有するスタートアップで、化石資源由来ではなく、バイオマス由来のエネルギーや化学品を高効率で製造することを目指しています。独自の触媒、および触媒再生法を有しており、液化石油ガス代替物や化学品原料となるプロピレンを高収率で製造できる点が強みです。
「ゼオライト触媒技術」とは、ゼオライトという多孔質の結晶性物質を、触媒として利用する技術です。ゼオライトは極めて微細な孔やチャネル構造を持っており、特定の物質だけを通過させる選択性を持っています。
この技術の応用により、iPEACE223は再生可能性の高い製造を可能にしています。具体的には、食動物由来のバイオマスを発酵させて製造できるバイオエタノールを、効率的にバイオプロピレンに変換可能。バイオプロピレンは燃料やプラスチック製品、化学溶剤、化学繊維として製品化できるため、石油原料に頼らないサステナブルな生産活動が可能になります。
ごみ処理問題をサステナブルに解決するJOYCLE、1.7億円の資金調達を完了
事業内容: 小型アップサイクルプラントに特化したコンサルティング・データプラットフォームサービスの提供
調達金額: 1.7億円
引受先: ANOBAKA、中部電力ミライズ、三友環境総合研究所、鎌倉投信、寺田倉庫、北海道電力、他個人投資家
今後の展望: 実証実験の推進、小型プラントの設置
JOYCLEは、ごみ処理問題に取り組むスタートアップ企業です。従来の大型処理施設でのごみ処理に対して、JOYCLEは「分散型インフラ」という形を提案しています。具体的には、焼却以外の方式でごみを処理する装置、「アップサイクルプラント」にセンサーを取り付けることで、環境貢献度を可視化する事業を行っています。
「アップサイクルプラント」とは、生ごみを発酵させて発電用のガスにする装置や、燃えるごみを熱分解してリサイクル可能なセラミック灰にする装置を指し、既存の装置にJOYCLEが命名をしたものです。これらの装置は小型化が可能かつCO2も削減できるため、ごみ処理にかかるコスト削減や環境問題といった課題に対して対応することができます。
JOYCLEは各事業者に対して、最適なアップサイクルプラントを提案する他、プラントに特化したIoTセンサーおよびデータプラットフォームサービスを提供します。このデータプラットフォームにより、環境貢献度やコストカット、稼働状況等が確認可能。これにより、コストカット効果や環境への効果が客観的に把握でき、オペレーション効率化や保守運営が容易になります。
まとめ
9月9日から9月13日の環境・エコロジー関連事業の資金調達例をまとめました。
SymbiobeやiPEACE223といった企業は、独自の技術やノウハウを有しており、それを活かしたサステナブルな生産活動の実用化を目指しています。
一方、パワーエックスやJOYCLEは、既存の技術を付加価値の高いサービスに発展させることで、エコフレンドリーな技術のさらなる普及を目指しています。
「Plus Startup」では、今後も資金調達例を紹介してまいります。
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